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2007年05月03日

覚悟。その2。

彼の言葉を今でも覚えている。


『和菓子が苦手なんですよ』


私のサラリーマン時代の後輩である彼は、
新入社員として配属されてきた。
屈託のない笑顔と、人懐っこくて嫌味のない彼は、
職場でもちろん人気があり、しかし、まだ未熟であり、
でも、持ち前の粘り強さでどんどん成長していった。

その彼と話をしているときに、意外でもあり、
さもありなんと思った言葉が、冒頭の言葉である。

彼の実家は和菓子屋さんである。
2代続いた老舗。その一人息子。
幼いころから和菓子を食べて育った彼は、
生まれて初めて洋菓子を食べた時に思ったそうだ。


『世の中にはこんなにうまいものがあるのか』


印刷屋の倅であった私もこの意見はわかる。
身近なものほど、幾ら良くても『飽きてしまう』のだ。

その彼は、今、和菓子屋の3代目になった。
会社を辞め、平日の夜に新幹線で箱根から週何日も東京の菓子学校に通い、
もちろんお店では早朝から修行し、店の味を伝える者となるために、
血のにじむような努力をしたはずだ。

箱根のお店に行ったとき、名物はまだだけど、
他のお菓子は少しずつ作り始めました!
と嬉しそうに話してくれ、紙袋にそっと自分が作った菓子を入れてくれた。
そのとき、自分のことのように嬉しかったことも鮮明に覚えている。

店を継ぐ決心をしたのは、彼の母が病床に伏したときであった。
継ぐものがいない。それはきっとお母様にとって最大の心残りであったろう。
病床で形ばかりの結婚式を挙げ、最期を看取った彼等夫婦の決心は、
間違いなく揺らぐものではないはずだ。

今の彼は、更に成長している。


『この味を守り、店を守り、店のみんなを守るのは私ですから』


経営者としての、そして、長い時が紡いだものを伝える覚悟。
それは間違いなく、この日本という国に何かを残すであろう。

中小企業でも。いや、中小企業だからこそできることがある。
私たち税理士の仕事のひとつは、
そんな経営者の覚悟を支援することでもあります。

投稿者 fasio : 2007年05月03日 01:52

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